平成10年度と平成11年度においては、文献的研究及び米国・中国の研究者との相互討論にもとづき、日本版・中国版・米国版の測定用具を開発し、日本・中国・米国の小学生、中学生、及び高校生を対象に、「自己と相違する他者の諸特徴」及び「他者と相違する自己の諸特徴」の認知と受容に関する調査を行ってきたが、これらをもとに、平成12年度においては以下の研究を行った。 1.米国と中国の研究者と得られた結果について意見交換を行い、日本における他者の受容と自己の受容の特質について、1)他者の受容の容易さと対照的な自己の受容の困難さ、2)個人水準での受容の容易さと対照的な集団水準での受容の困難さ、3)外集団に比して、内集団における受容の困難さなどを明らかにした。 2.得られた研究結果を、ストックホルムで開催された国際心理学会議、北京で開催された国際行動発達学会、日本教育心理学会などで発表し、各国の多数の研究者と相互討論を行い、日本の児童生徒の特質をもたらす諸要因についての検討を深めた。 3.過去3年間に渡って行ってきた研究成果を報告書という形で公表した。この過程で、ここで得られた結果は、従来のステレオタイプ的枠組み、すなわち集団主義対個人主義という枠組みのみでは説明できず、日本の児童生徒における「希望」の喪失、複雑な文化的影響、集団的活動の体験などの要因を組み込んださらなる研究の方向について着想を得た。 4.日本において、幼児を対象とする半構造的面接及び大学生を対象とする質問紙調査を実施した。これらの結果については、現在もなお、分析の途上にある。
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