日本・中国・米国の小学校4学年、中学校1学年、高校1学年の児童生徒、計1288名を対象に、「自己と相違する他者の諸特徴」及び「他者と相違する自己の諸特徴」の認知と受容に関する調査を実施し、比較文化的発達的検討を行った。日本においては、幼児と大学生対象の調査を追加した。主な結果は次の通りであった。 1.一般に、相違する他者の諸特徴の受容は、日本の児童生徒の方が他国より容易であるのと対照的に、他者と相違する自己の諸特徴の受容においては、日本の児童生徒の方が他国より困難である。 2.日本では、自己と相違する他者の諸特徴の受容は、年長になるに伴って、次第に容易になる一方、他者と相違する自己の諸特徴の受容は容易にならないが、対照的に、他国では、他者と相違する自己の諸特徴の受容が年長になるに伴って容易になる。 3.自己と相違する他者の諸特徴の受容について、個人水準では、日本が他国より容易であるが、集団水準では、日本が他国より容易であるとは言えない。 4.日本では、他国と異なり、自己と相違する他者が集団外にいる場合よりも集団内にいる場合の方が、受容が困難である。 5.男性よりも女性の方が、自己と相違する他者の諸特徴の受容が容易であり、他者と相違する自己の諸特徴の受容が困難である傾向が認められる。 これらの結果は、集団主義対個人主義という従来のステレオタイプのみによっては説明できないことを示しており、日本の児童生徒の「希望」の喪失、複雑な文化の影響、集団的活動の経験の文脈で討論され得る。
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