研究概要 |
質問紙法による性格検査の項目への回答が,被検者のどのような心理的過程の結果として決定されているかを,反応潜時を指標として検討する。この反応潜時を規定する要因の最大のものは記憶におけるself-referent効果である。しかし,自己についてのシェマを参照するだけでなく,反応の偏りも影響していることが,多くの研究から知られている。この影響を調べるためには,性格検査に利用されている項目について,社会的望ましさ,黙従傾向を引き起こす程度,隠蔽性などを測定しておく必要がある。 今年度は,逆転項目による黙従傾向の強さを測定した。Bock,Dicken,&Pelt(1969)と同様に,「あてはまらない」に採点される項目が尺度を構成する60項目中47項目ある尺度Hyと,「あてはまる」に採点される項目が48中39項目あるPtを利用した。HyとPt尺度の各項目のオリジナル項目と肯定否定を逆転した項目(逆転項目)をまず作成した。逆転項目の妥当性を45名の大学生にオリジナル項目と逆転項目を対にし,片方の項目で「あてはまる」と答えた人はもう一方の項目では「あてはまらない」と答える可能性を評定することで確認した。ここで,うまく逆転していなかったものについては,再度項目を作り直して,別の23名の評定者に逆転の妥当性を同様に評定させ,項目を確定した。 これらの項目を利用して,各尺度の元の項目で構成されたオリジナル版テストと肯定否定を逆転した項目で構成した逆転版テストの2つの版を作成し,これらのそれぞれを2週間おいて,同一被検者(183名)に実施した。現在,結果は整理中であるが,検討の仕方は,SASの共分散構造分析(proc calis)によって黙従傾向の影響の強さと,黙従傾向の強さの個人差を検討する予定である。
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