研究概要 |
質問紙法による性格検査の項目への回答が,被検者のどのような心理的過程の結果として決定されているかを,反応潜時を指標として検討する。今年度は,108名(女)にコンピュータ化実施MMPIを適用して各項目の反応潜時を測定した。さらに,11名から各項目の読みのみにかかった時間を測定した。 項目の読み時間の550項目全体の平均は1.77s(SD=.67s,中央値=.70s),1文字あたり約85msである。「あてはまる」と回答したときの反応潜時の550項目全体の平均は,4.43s(SD=1.85s,中央値=3.05s,最長は項目74の12.19s,最短は項目502の1.37s)であった。「あてはまらない」と回答したときの反応潜時の550項目全体の平均は,4.27s(SD=1.76s,中央値=2.96s,最長は項目74の12.35s,最短が項目339の1.63s)であった。 このMMPI新日本版の反応潜時が,どのような項目特性と関連するかを重回帰分析により検討した結果,項目の文字数が多くなると長くなった。また,「あてはまる」と回答する潜時は,社会的に望ましさが高くなると短くなり,「あてはまらない」と回答する潜時は,是認率が高くなると長くなるった。 次に,反応潜時と被検者特性と関連については以下のことが明らかになった。尺度が表す傾向の強い被検者は,尺度値の低い被検者に比べ,自分の特性をよく表す項目に対して肯定する(採点キーと一致する回答)のは速いが,否定するのは遅い。逆に,尺度値の低い被検者は,自分への関与の少ない項目に対して否定する(採点キーと一致しない回答)のは速いが,肯定するのは遅い。この傾向は,自分の特性を表す項目に「あてはまる」と回答するの方が回答に要する反応潜時は短いというMarkus(1977)の結果を支持するものといえる。
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