本年度も前年度に引き続き中世を中心とした古文書・古記録の調査を行った。東大史料編纂所の影写本、写真等を用いて仮名書き資料を主に調査した。高野山文書、東寺百合文書などは、一つだけでも膨大な量にのぼり、多くの時間を費やすことになった。含まれている多数の仮名文書は、これまでことばの面から十分調査されたとは言えない。前年度にも関心をもってある程度調査した促音表記は、古文書でも明確かつ意識的に特別な工夫(片仮名の〈ツ〉のような字体を専用)がなされていることがいよいよはっきりと確認された。14、5世紀以降は、東北から九州まで日本全国で幅広い階層に普通に行われており、早くは鎌倉時代の文書にも見られることが分かった。(高野山文書 湯浅宗親書状 〈建治三 1277>三月十日など〉これらについては、「古文書・古記録の促音表記」として論文にまとめ、現在印刷中である。なお、未調査の文書・古記録は膨大であるが、時間の許す限り調査をすすめ、今年度、これらをもとに多方面から考察した結果を中間報告としてまとめるつもりである。
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