研究概要 |
『アルハンゲリスク福音書』(以下Arch)本文の語彙総索引を作製するための基礎的作業を行なった。作製ずみのテクストを再チェックし、問題個処の再確認を行ない解決をはかった。ただし依然として若干の不読個処がある。この際、索引との関連でもArch第2部分に出現する文字上の2点の価値が改めて問題となった。Sokolovaによる先行研究があるが、やや異なる結論を得た。2点は次のように分類できる。a.無意味のもの-装飾的 b.有意味のもの-(1)本来のもの i接頭辞に係わるもの (2)擬似的のもの ii子音間の流+jersに係わるもの 子音文字連続の第2字上に付くもので有意味のもの(b.1.)は2文字間にreduced vowelが存在したことを示すとするSokolovaの説は正しい。2点の例の総数は960以上、このうち有意は349でその34%。SokolovaによればソナントついでBに有意の2点が付く傾向が大というが、必ずしもそうではなく、H,C,Л,T,B,P,Dの順でむしろ大ざっぱについて歯音文字ついで唇音文字の一部に付くといえる。索引とは2点なしの文字と同順と扱ってよい。他文献との比較により次の点が明らかになった。(1)Archにおける少数の語彙の特異性。55vのоrNrвоはロシア語での用例の最初の1例。(2)imperfect等における母音重出はhyper corvected formの疑いあり。(3)テクスト成立時での編集はありえたか。パソコンによる索引作製のための準備として次を行なった。第1に文字処理プログラミング言語per1によるキリル文字の作成。文字上の2点やカギ付き文字さらに特殊記号を打ち出し可能とするためにラテン文字のコード体系は数附則で使えず、日本文字のコード体系を用いる方式をとった。第2にper1処理系を用いてソートプログラムおよび出力プログラムの作成。前者は終了し、後者は末終了で次年度継続したい。
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