研究課題/領域番号 |
10610530
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
逸身 喜一郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40107420)
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研究分担者 |
根本 和子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (50313185)
片山 英男 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (70114436)
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キーワード | 西洋古典学 / ギリシャ・ローマ文学 / エポス / 叙事詩 / ヘクサメトロス |
研究概要 |
初年度ならびに前年度に引き続き、ギリシャ・ローマを通じてのエポス(すなわちヘクサメトロスにのせて書かれた詩の総称)の全容をとらえるべく、従来、顧みられることの少なかった作品群の調査が中心となった。研究分担者以外にも大学院生の協力を仰ぎ、個々の作品の読解につとめる一方、ジャンル全体の特性を把握すべく、作品相互の関係を明らかにすることに格段の配慮をしている。 エポス内部での分類は、通常思われているほどには容易ではない。とりわけウェルギリウス以降のラテンの作品において、狭義の叙事詩(物語詩)と、教訓詩(それ以外の諸ジャンルはいうに及ばず)の二分すら、ときに越境する。すでにウェルギリウスの『農耕詩』にも「エピュッリオン」(小物語詩)が含まれており、事物のカタログの偏愛(ルーカーヌス『内乱記』を例に取れば、その「リビアの毒蛇のカタログ」はニーカンドロスと関連づけられようし、「星辰」の叙述はマニリウスさらにはアラートスに遡る)もまた両者を結ぶ接点であるが、決してこれらだけではない。そもそも今日「教訓詩」は自明な概念のごとく取り扱われているけれども、その定義を与えようとすればするほど、先行諸研究も予想以上に詰めてはいないことが見えてくる。とまれ来年度は最終年次であるので、一応の決着をみたい。
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