研究概要 |
平成10年度の研究計画実施につき,アメリカにおける障害者の機会平等の憲法学的研究については,第1に,アメリカにおける障害者の差別の禁止や社会参加を推進したリハビリテーション法の制定とその改正を通して,特にその後の障害者の差別を禁止し多大な流れを形成した504条の歴史的な論理とその動向を考察し,その障害者の差別をめぐる訴訟・裁判事例の検討を試みてきた.この部分については,平成11年度研究計画の総括的なまとめのなかで,文章化する予定である. 第2に,いわゆる機会平等の法理念を形成した1990年制定のADA(Americans with Dis ablities Act of 1990 U.S.C)の歴史的背景とその内容の検討を試みている. 同法律がアメリカ社会の障害者の社会参加と活動を保障するひとつの契機になったが,その内容上,様々な法的な要件のもとで「障害」の認定やその内容を制度上保障するシステムを用意した点などは基本的に評価できるが,しかし,アメリカ社会では,同法律をはじめ障害者法制の形成により雇用や教育の分野で一定度改善されたものの,依然として,障害者差別も存在しておりその意味での立法レベルでの解決だけで,機会平等の理念は達成されない.けだし,この思想なり理念の背景にはねばり強い障害者の運動があることも事実であり,その点でアメリカの訴訟社会を反映している.この点を中間的なまとめを別稿で考察したが,全体なまとめのなかで若干補足するつもりである(拙稿「アメリカにおけるADAと機会平等の思想」「高田短期大学紀要」17号 1999年3月刊).
|