研究概要 |
2年計画の1年目には、98年に実施された第18回参議院議員選挙における女性候補を対象に、立候補過程を調査した。中心は、女性候補のバイオデータの収集とデータベース化であった。また、わが国の女性候補の供給源(エリジビリティー・プール)の質とサイズを調査するために、郵送による調査票調査をおこなった。結果は、回収率が極めて悪く、また、支援諸団体が必ずしも恒常的団体でないために、調査の成果は十分ではないが、今後、既存の恒常的団体の調査を中心にしてそこからネットワークをたどって調査する、聞き取り調査が必要であることがわかった。 2年目には、バイオデータに基づき、女性候補者の社会的属性を分析。国政選挙のレベルでは、日本共産党を除き、各政党とも女性候補の立候補を促進するための組織的な取り組みが弱く、むしろ地方議会選挙のレベルで変化が生じていることがわかったので、研究を軌道修正し、過去10年間の北海道における市町村議会議員選挙での女性の立候補状況及びその社会的背景の変動を分析した。 この10年間の変化は、次のように要約できる。(1)女性候補は全体的に増加の傾向にある(2)女性の立候補頻度は,都市化・人口増加と相関がある(3)キャリアを中心とするエリジビリティー・プールは未成熟の段階にある(4)女性が立候補する再のノウハウをコーチする支援ネットワークが過去5年間に全国規模で形成されている(5)女性の立候補を促す動きは、政党よりも大都市を活動拠点とする市民運動に見られ,そこに地方からの参加者が合流している(6)有権者の政党離れが進む中で、政党の中にも「男女共同参画」「女性のエンパワーメント」などを掲げて、女性候補の擁立をすすめるケースが出てきた。 98年9月に、女性の立候補態度及び政党への帰属感など、得られた知見を基に、アメリカ政治学会(ボストン)で研究報告を行った。また、99年7月に、国際政治心理学会(アムステルダム)で、研究成果の一部を論文発表した。
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