研究計画の2年目となる本年度は、主として以下の2点に重点を置いて研究を進めた。 1.コソヴォ紛争はEUの次期拡大プロセスに如何なる影響を与えたか。 2.マルタ、キプロス等の地中海諸国のEU加盟申請の動向はどうなっているのか。 後者については、まずマルタ共和国を取り上げ、EU・マルタ関係の歴史的推移を整理すると同時に、マルタの2大政党によるEU加盟をめぐる論争が同国の対EU外交を左右してきた現状を分析し、マルタのEU加盟をめぐる今後の課題について考察を加えた。キプロス、トルコのEU加盟申請ならびにEUの地中海政策全般については現在学会発表に向けて準備中であり、次年度に研究成果を論文の形で公開する予定である。 前者については、コソヴォ紛争がEUの拡大プロセスを加速化・変化させたことについて分析を加えた。1999年10月に提出された欧州委員会の拡大に関する年次報告書において、1998年3月から開始された拡大プロセスに大きな変更が提案され、イスラム圏に属するトルコを含めて、現在加盟申請を提出している13カ国すべてを加盟候補国として認め、政治基準を満たしている国と加盟交渉を2000年2月より開始すること、および経済基準・法的(アキ・コミュノテール)基準を満たしていると判断された加盟申請国から、順次加盟を認めることが提案された。1999年12月のヘルシンキ欧州理事会では、同提案を正式決定すると同時に、2000年政府間会議(IGC)を開催し、次期拡大に耐え得るEUの機構改革を2002年までに実現することになった。 このようなコソヴォ紛争に伴う拡大プロセスの変化、および冷戦構造崩壊後のEU拡大の動向全般については、一部はすでに公開しているが、次年度にそれらについてより詳細な研究を公表すべく現在論文を執筆中である。
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