研究課題
近年の光通信技術や量子コンピューター理論の進歩に伴い、それらの数学的基礎を明確にし、更なる発展の可能性をもたらすことを可能とする数学的理論の構築は急務であると考えられる。しかし残念なことに、これら先端技術を利用するために必要となる情報の表現形式は、古典的確率論に基礎を置くShannonの情報理論では取り扱うことができないものである。そして現在では、作用素代数論に基礎を置く量子確率論及びShannonの理論の量子論的拡張とも言える量子情報理論が、数学的基礎付けの役割を担っている。しかし量子情報理論は、古典的情報理論の完全な拡張形式とは成り得ず、エントロピー不等式など古典系においては成立している基本的結果が成り立たないという現象を呈しているのが現状である。本研究では、特に量子情報理論における情報の表現形式を調査し、今後増大すると予想される量子情報データ蓄積問題に対処するべく、これらの圧縮再生原理を考察することを目的としている。以下では、平成10年度に発表された研究論文の概要を個別に紹介する。(1). 『核型作用素族の位相論的分類と連続微分可能関数族空間の理論への応用』では、量子情報の表現形式に用いられる核型作用素族の位相論的分類法を呈示し、連続微分可能関数空間族の分類理論との対応を示した。(2). 『再生核Hilbert空間の作用素論的分類』では、標本化定理に代表され、通信工学において論じられる帯域制限信号空間の分類を目的として、L^2-空間の部分空間としての再生核Hilbert空間分類法を呈示した。(3). 『作用素代数族の同型問題への量子エントロピー理論の応用』では、量子情報理論において用いられている量子情報源分類法を作用素代数論に応用することを試みた。(4). 『コンパクト非線形写像の同型問題』では、線形位相空間上の非線形写像から構成される力学系の同型不変量を作製した。
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