研究課題
基盤研究(C)
平成10年度は、光学顕微鏡にCCDカメラを取り付けたシステムで荷電重粒子の電荷を測定するソフトウェアを開発したが、今年度はそのシステムを用いてこれまでの長時間気球実験で宇宙線に照射された原子核乾板中の飛跡の再測定を行った。測定したデータを用いて乾板中のバックグラウンド、粒子の入射方向による測定する光吸収率の依存性を求めるための解析及びシミュレーションが現在進行中である。南極周回気球実験のフィルム解析は、予想以上のバックグラウンドと飛跡の潜像退行のために電磁カスケードシャワーをチェンバー上部の相互作用発生点まで追跡する作業に手間取っているが、高エネルギー事象に集中した解析を行い、約60事例の相互作用を確認した。以上の解析は今回の研究期間に広島大学と広島国際大学で稼動し始めた原子核乾板解析システムを使って行われ、国内に日米共同気球実験の解析拠点をつくるという本研究の目的の一つは達成された。これまでのデータのまとめに関しては、南極周回気球実験のデータの一部を含んだ宇宙線陽子、ヘリウム成分のエネルギースペクトルに関して、エネルギー精度がスペクトルの形状に及ぼす影響を調べ、特に長時間気球実験で得られたデータの再解析を始めた。また、以前解析した原子核-原子核相互作用において見つかった発生電子対数異常の事例についてデータの再解析結果を論文として公表した。今回の研究期間中に当初の目的であった宇宙線の組成に関する結果を出すにわいたらなかったが、今後は特に以前より報告されている高エネルギー炭素-酸素核成分の宇宙線組成における過剰を確かめることを優先に長時間気球実験のデータ解析を続けていく予定である。
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