サケ科魚類の河川型は河川上流部支流に半ば隔離された状態(局所個体群)で生息していることが知られているが、その支流間の交流がどの程度であるかほとんどわかっていない。本研究の目的は局所個体群の動態を明らかにし、その局所個体群間の交流がその動態にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とする。本年度は特に、空知川上流の氾濫原に多数みられる湧水起源の小支流に生息するイワナ属オショロコマを対象に、その本流および湧水の物理的条件、オショロコマの体長組成、移動、個体数推定などの生態的調査を行い次の結果を得た。 (1) 調査対象とした4支流(流呈300-500m)に自動水温計を設置した。そのうち3支流は年間を通じて6-7度で安定し、1支流は6-10度と変化した。但し、本流は計測器の故障のため資料はない。 (2) これら支流個体群において個体数推定を行い、個体群全体に占める0才の割合と体長組成が支流毎に異なっていることが明らかとなった(3.4-84.0%)。このことは支流毎に異なった構造をもっていることが示唆された。 (3) 本流にもオショロコマが分布し、これらが、支流の再生産に大きく寄与している可能性が示されたが、支流への遡上数は異なっていた(6-22尾)。来年度からは支流毎の移出入を明らかにする予定である。 (4) 各支流毎の遺伝的交流の程度を明らかにする目的で、上記4支流の他に7支流から39-57尾のオショロコマを採集し、フェノール/クロロホルム法によりDNAを抽出した。現在、マイクロサテライトDNA領域を用いた解析が進行中である。
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