研究概要 |
平成10年度の研究は,大きく2つの研究指針に添って行われた. 1. 準最尤復号アルゴリズムの開発 再帰的最尤復号(RMLD)アルゴリズムにおいて比較的重要度の低い計算を省略することにより,復号誤り率をそれほど悪化させることなく,復号複雑さを軽減する.RMLDアルゴリズムでは元の符号を適当にコセット分割し,各コセットに対する代表符号語を再帰的に計算することで復号を行う.再帰の上から二段目および三段目における計算量がかなり大きくなるので,この部分の計算を適宜一部省略することによって,準最尤復号アルゴリズムの実現を行う.今年度は提案アルゴリズムを試作し,計算機模擬によって誤り率および複雑度の評価を行った(発表文献1,3).その結果,レベル2において,全体のコセットの中で最終結果への貢献度が低い3/4のコセットに対する計算を省略しても,復号誤り率は最尤復号に比べてそれほど悪化しないこと,計算複雑さは従来の半分から1/3にまで低下することが確認された.平成11年度は,計算省略のための規準をより系統的に求める手法の開発を行う予定である. 2. RMLDにおける尤度表現法と複雑さの関係解明 RMLDにおいては,受信信号点の量子化レベルや閾値,尤度の加算における計算精度が復号誤り率や復号複雑度に影響する.発表論文2を含め,この関係を調べた.従来設計されていた回路では量子化レベルは8,計算精度は十分大きくとっていた.まず,最適な量子化閾値を求めたことにより復号複雑度を増加させることなく,通信路のSN比が5.0dBのときの復号誤り率を61%まで低減させることができた.また,より信頼性の高い復号が求められる場合,量子化レベルと計算精度を適切に選ぶことにより復号複雑度の増加が6%程度で,同じSN比のときの復号誤り率を43%にまで低減する回路が設計できることを示した.
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