研究概要 |
平成11年度の研究は,前年度の研究結果をふまえて次のような成果をあげ,新たな知見を得た. 1.再帰的最尤復号法(RMLD)において比較的重要度の低い計算を省略することにより,復号誤り率をそれほど悪化させることなく,復号複雑さを軽減するような準最尤復号アルゴリズムの開発を行った.提案手法を計算機上にて試作し,その誤り率と復号複雑さのトレードオフ関係について解明した.計算機模擬によって提案アルゴリズムの誤り訂正能力と復号複雑さについて評価したところ,パラメータの取り方次第では,MLDとほぼ同程度の誤り訂正能力をもち,かつ復号複雑さを1/4程度まで減少させることが可能であることが明らかとなった.また,パラメータの選択基準を得るため,RMLDの復号過程において最尤系列が統計的にどのような振舞いをするのかを,計算機模擬によって観察した.得られた観測結果に基づいてパラメータを選択することにより,提案アルゴリズムの誤り訂正能力や復号複雑さを制御することができる(研究発表1,2). 2.元のRMLDと異なり,局所的な最尤系列の表を必要な所のみ構成するための方法論を確立し(研究発表3,4),元のRMLDが純粋にボトム・アップ方式であったのを,トップ・ダウンを基本とする方式に再編成した.最尤復号にも適用を試みた所,計算機模擬の結果は,復号雑度が著しく低下することを示している(研究発表4). 3.局所的な最尤系列の表は,与えられた区間に関する剰余類に関して,各類中の最大のメトリックスを持つ系列より成る.それらの系列の中でメトリックスの大きい方から何番目までを作成しておけば十分であるかについて,1次的な情報は剰余類首の重み分布により与えられる.この重み分布(符号の復号に関する基本的な問題でもある)を求める新しいより効率的な方法を開発した(研究発表5).
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