当研究室では、ゲル化溶液(ポリアクリルアミド、アルミン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムの混合水溶液)と二酸化炭素飽和水(CO_2飽和水)を多孔質媒体内に交互圧入することによりポリマーを油層内で架橋処理する新手法を提唱している。本研究では、このゲル化プロセスを不均質な油層からの油採収に適用することを考えて、油層からの油採収率を最大にするゲル生成状態(ゲルの強さと生成速度と多孔質媒体内におけるゲル生成位置)を得るための交互圧入手順を設計する。本年度は、ビーカーテストによるゲル生成条件の確認と1次元の多孔質媒体コアを用いた実験を行った。さらに、多孔質媒体内の2液混合によるゲル化過程の数学モデル化を行い、ゲル生成による油採収挙動の数値シミュレーションモデルの構築を行った。実験から得られた結果は以下の通りであり、現在シミュレーション結果との比較検討を行っている。 (1) ゲル化溶液を入れたビーカー内にCO_2ガスを吹き込んでpHを低下させたときの粘度低下を測定した。溶液の初期pHは約12であり、PH約10でゲル化が始まりpH7では溶液はゲルに変化した。強固なゲルを生成するためには、ポリアクリルアミド濃度250mg/l以上、アルミン酸ナトリウム濃度が150mg/l以上必要であることがわかった。 (2) 1次元のコア実験では、直径2.8cm、長さ47cmのアクリル円筒に粒子径0.150〜0.215mmのガラスビーズを充填したコア(浸透率約24μm^2)を使用した。コア内にゲル化溶液とCO_2飽和水を0.2PVずつ1cm^3/minのレートで交互圧入することにより、5〜7サイクルの交互圧入でコア内にゲルが生成することを確認した。 (3) 浸透率の異なるコア(浸透率約24μm^2と105μm^2)を並列に接続した実験モデルに対して油採収実験を行うことにより、油採収率が約20%増加することを確認した。
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