当研究室では、ゲル生成剤(ポリアクリルアミド、アルミン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムの混合水溶液)と二酸化炭素飽和水を多孔質媒体内に交互圧入することによりポリマーを原位置で架橋処理する新手法を提唱した。本研究の目的は、このゲル化プロセスを不均質な油層からの油採収に適用することを考えて、油層からの油採収率を最大にするゲル生成状態(ゲルの強さと生成位置)を得るための交互圧入手順を設計することである。本年度は、2次元の多孔質媒体実験モデルを製作してゲル生成剤と二酸化炭素飽和水の交互圧入時のゲル生成挙動を調べた。箱型をした透明なアクリル製の容器内に粒径の異なるガラスビーズを層状に充填することにより、幅8cm、高さ0.8cm、長さ50cmの高浸透率層と低浸透率層(浸透率比:約4と16)からなる2次元の実験モデルを製作した。このモデル内にゲル生成剤と二酸化炭素飽和水の交互圧入を行った結果は次の通りである。 (1) 1次元の実験結果とは異なり、2次元の実験では浸透率の異なる層間のクロスフローが生じて、モデル入口から圧入したゲル生成剤と二酸化炭素飽和水は多孔質媒体内では期待通りに混合しない。 (2) 層間の浸透率比が小さい場合には、約0.4PVの交互圧入時点でゲルが生成してモデルは閉塞する。ゲル生成に伴う粘性クロスフローの影響が強いために、両層は同時に閉塞する。 (3) 層間の浸透率比が16の場合には、層間の粘性クロスフローの影響が小さく、高浸透率層のみにゲルを生成させることが可能である。 以上のように、圧入初期の混合により多孔質媒体内にゲルが生成してもその後の粘性クロスフローの影響が強い場合には、目的とする層のみをゲルにより閉塞することは難しいことがわかった。異なる浸透率の層からなる油層にポリマー架橋処理法を適用する場合には、浸透率比を考慮した圧入方法を選定する必要がある。これらの挙動を数値計算によって明かにする試みを実験と並行して行った。
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