1. 深海性デトリタス食性カイアシ類Cephalophanes属の頭部先端にある特殊な光感覚器官パラボラ反射板と消化管の微細形態及び消化管内容物を走査型・透過型電子顕微鏡で観察を行った。反射板はグアニン結晶でなく、クチクラ様の多数層で構成されていた。消化管前端には食物消化に関与すると考えられる電子密度の高い物質が充満している場合があった。消化管内容物としては甲殻類破片が確認され、多少のバクテリアも検出された。これがデトリタスに付着する発光バクテリアかどうかは今後の課題である. 2. 沿岸性粒子食性カイアシ類Paracalanus parvus s.l.、Acrocalanus gibberなどの消化管内容物、糞粒を蛍光顕微鏡で観察した結果、自家蛍光を発し生きていると考えられる珪藻類が見られた。こうした未消化のまま排出される藻類の沿岸生態系における機能(捕食回避、休眠細胞・休眠胞子の速やかな沈降促進)を推定した。 3. 中海で優占する汽水性カイアシ類5種(Acartia hudsonica;A.sinjiensis;Eurytemora pacifica;Sinocalanus tenellus;Oithona davisae)の食性の調査をした結果、渦鞭毛藻類Prorocentrum minimumや珪藻類Cyclotella spp.、Minidiscus comicus(大きさ4〜35μm)などを摂取しており、餌の競合が見られた。最優占するO.davisaeは従来、珪藻類を摂取しないと考えられていたが、4-7μm程度の小型珪藻類も季節をとわず摂食していたことが明らかになった。O.davisaeが本庄工区内で爆発的に増加する時期(11〜12月及び6月)は他4種がほとんどプランクトンに出現しない時期であり、本種の個体群密度の増減には餌をめぐる競争種の存在が大きいことが推定された。
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