研究実施計画にもとづき器官形成と密接に関わるラミニン機能ペプチド配列のスクリーニングを続行した。本年度は、ラミニンα1鎖の解析に加えて、ラミニンα1鎖同様、顎下腺器官発生の初期過程から上皮基底膜に発現するラミニンα5鎖由来のペプチド配列についての解析を開始した。α1鎖の場合同様、α5鎖のC末端のGドメイン(957アミノ酸基)にまず注目し、4〜5残基程度互いにオバーラップするようにして合成した12〜13残基からなるアミノ酸配列ライブラリーから共同研究者の野水(北海道大学大学院・地球環境科学研究科)らにより細胞接着活性を指標に選ばれた19のペプチド配列を、それぞれ単独でマウス顎下腺器官培養系に添加し、それらの効果を見た。予備実験の結果では、それぞれ単独で顎下腺の器官形成過程になんらかの影響をおよぼすようなペプチド配列は認められなかった。しかしながら、A5G33ならびにA5G71の2つは、単独ではなんら効果をおよぼさないものの、こちらも単独ではなんの効果もおよぼし得ない低濃度のα1鎖由来ペプチドAG73と混合して添加されると顎下腺器官形成を強く阻害するという興味がある結果が得られた。現在、この組み合わされた場合の作用について、その阻害様式の詳細を子細に検討すると共に、他の組み合わせについても検討中である。
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