ZOTはコレラ菌のVirulence coreの構成要素で、腸管細胞のtight junctionの1つであるZonula Occludensを可逆的に開裂する。さらに、WaldorとMekalanosは、ZOTが非病原性コレラ菌にVirulence coreを持ち込むfilamentous phageの形成を一部担っていることを報告している。このZOTに特異的なDNAプローブを使って尿路病原性大腸菌をSouthern hybridization testで調べたところ、low strengencyで前立腺炎患者由来の菌株が強く反応した。この尿路病原性大腸菌(UPEC)に存在する今までに報告されていない病原遺伝子群を分離・同定し、その解析を行った。 Purine NTP binding motifを元に2セットのprimer対を作成し、前立腺炎患者由来大腸菌Z42株に対してPCRを行った。得られたPCR産物をprobeにしてColony hybridizationによりUPECにおけるその分布を調べ、更にZ42株の染色体DNAから約13kbの遺伝子断片を分離し、この解析を行った。PCR産物をprobeにして行ったColony hybridizatioonの結果、健常人由来の大腸菌(50株)の分布が24%だったのに対して、378株のUPECでは87%と高頻度に分布していた。このPCR産物を含む遺伝子断片を分離・解析したところ、346アミノ酸からなる分泌型蛋白をcodeしていた。更に、この遺伝子の下流には独立した3つのORFが存在しており、これら4つのORFの報告はなく、それぞれusp、orfU1、orfU2、orfU3と名付けた。また、これらのORFを含む約13kbの塩基配列を大腸菌K12株のゲノムと比較したところ、aroPとpdhRの間にこれらのORFを含む約4.2kbの遺伝子断片が挿入されている事が分かった。更に、上行性尿路感染のマウスモデルでUspの病原性を証明した。
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