麻疹ウイルスの感染防御抗原としてH及びF糖蛋白質が重要である。私達は、麻疹ウイルスの感染防御に関与するエンベロープ糖蛋白質の立体構造に関する研究のために、麻疹ウイルス粒子をある種の蛋白分解酵素の処理によって、生物活性を担った可溶化H糖蛋白質が得られることを明らかにした(1995年)。 また、麻疹ウイルスのH及びF蛋白質をコードするcDNAを構築しバキュロウイルスベクターを用いた発現系により大量の分泌型H蛋白質の単離を可能にした。さらに、H及びF蛋白の細胞膜接着付近にファクターXaの切断配列を導入した組換え体バキュロウイルスを作製した。組換え体バキュロウイルス感染細胞をファクターXa処理によって得られる可溶化H蛋白質は2量体で存在する事を確認した。従ってH蛋白質が生物活性を持った2量体を形成するには膜貫通領域が重要である事が確認された。ファクターXaの切断配列を導入した組換えバキュロウイルスよりH蛋白質の単離には、低濃度のファクターXaと短時間の処理が必要である。これらH蛋白質の大量精製をするために組換え体バキュロウイルスの培養法や抗麻疹抗体を用いたアフィニテイク口マトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー及び濃縮法の確立を行った。次年度は、大量のH糖蛋白質を得て麻疹抗体測定法への応用や結晶化を試みる予定である。しかしながら、換え体バキュロウイルスによるF蛋白質の発現はF蛋白質が不安定で明瞭な結果が得られなかった。今後更に詳しく検討する必要がある。
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