研究概要 |
抗体産生においてIL-1が調節因子として働くこと,特にIL-1は抗原提示細胞(APC)による抗原特異的なT細胞のプライミングに重要であることを明らかにしてきたが,本年度はIL-1はどのような分子を制御することによって抗体産生に関与するのかを明らかにした。APCがT細胞にシグナルを入れる際には,CD28とCD80/CD86を介した副シグナルが重要であることが知られているが,これらの分子の発現はIL-1KOマウスでも正常であった。また,このシグナルの阻害剤であるCTLA-4を加えても,IL-1KOマウス由来のAPCによる抗原特異的なT細胞の増殖は依然障害を受けていた。以上のことから,IL-1KOマウスではCD28-CD80/CD86副シグナルは正常と考えられた。次に,CD40-CD40L及びOX40-OX40Lを介したシグナルについて解析した。IL-1KOマウス由来のAPCで抗原特異的にT細胞を刺激した場合,T細胞上のCD40LとOX40の発現がコントロールより減少していた。また,この発現減少は培地にIL-1を加えることにより回復した。更に,抗CD40抗体による刺激により,IL-1KOマウスにおける抗体産生の減少が回復した。以上の結果から,IL-1はT細胞のCD40LやOX40の発現を調節することによって,抗体産生を制御していることが示唆された。 IL-1が関与するもう一つの免疫反応として,接触過敏症反応について解析した。TNCBをまずマウスの腹部に塗布し,5日後に同じものを耳に塗布して,耳の腫れで接触過敏症反応を測定した。IL-1α,IL-1β,IL-1α/βのKOマウス群を用いて反応性を測定したところ,IL-1αとIL-1α/βKOマウスで反応性の低下が見られ,IL-1βKOマウスは野生型マウスと差がなかった。更に,TNCBで刺激した後,T細胞を調製してTNP特異的な増殖を測定したところ,IL-1αKOマウス由来のT細胞の増殖が減少していた。以上の結果から接触過敏症反応では,IL-1αが重要な働きをしていることが明かとなった。
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