研究概要 |
我々は1989年から歯科医師が皆無に近いネパールで歯科治療を実施し,6年前からは健康教育に目を向け,歯科疾患の予防を目的にフッ化物洗口プロジェクト,健康教育を実施している.これを途上国の住民が自分たちの力でフッ化物洗口プロジェクトや歯周疾患の予防ができることも目指している。この研究ではフッ化物洗口の有効性を評価するとともに,住民自身が自分たちで健康教育を展開できるようにするプロセスを学問的に企画・研究・評価しようとしている.今年度は次のような結果,考察が得られた. 1.住民(学校の先生)に対する予防教育が大きな展開を見せ,我々がフィールドとしている地域の小学校11校,1,547名で定期的にフッ化物洗口が行われるようになった。 2.フッ化物洗口プロジェクトの評価は最終年度においているため,現時点での正確な評価はできていないが,学童のう触罹患状態をフッ化物洗口の実施の有無によって考えると,フッ化物洗口を実施してきた学校と実施していない学校ではDMFT指数やDMF者率に差があるように思われる。 3.村のリーダー(教員,保健所職員など)に対し歯科疾患の予防教育(歯の構造,プラークコントロール,除石法などの教育)を展開し,今年度は92名に行った。その結果,リーダーとなる住民が生徒や一般住民に予防教育できるようになり,一般に浸透しつつある. 4.今日フッ化物洗口法のう蝕予防効果は,広く認められることであり,我々のフィールドでもフッ化物洗口プログラムが急速に展開してきた.来年度にはう蝕予防効果が実証できると思われる.また,飲料水のフッ素濃度とフッ化物洗口プログラムが密接に関係するため,水質調査を実施し,我々のプログラムが有効であることが解った.今後さらに歯科健康教育を推進し,住民自身の力で健康を守れるようにしたい.この研究も現在も継続中であり,将来的にはネパール全土に展開できるように考えている.
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