急性・慢性肝傷害後の肝再構築過程では肝細胞の増殖のみならず肝類洞の再形成が重要であり、肝類洞内皮細胞の増殖・分化・アポトーシスのメカニズムを解明することは肝再構築過程のメカニズムを明らかにする上で極めて重要であると考えられる。そこで我々は、Wistar系雄性ラット肝より初代培養肝類洞内皮細胞の分離・培養することで、その増殖・分化・アポトーシスを系統的に解析することを試みた。 モノクローナル抗BrdU抗体を用いた間接免疫蛍光抗体法により細胞増殖能の変化を経時的に観察したところ、培養経過にともない増殖能は低下し、それに反してTUNEL法によるアポトーシス陽性細胞の出現率は増加することが明らかとなった。また、エタノール添加後に誘導されるアポトーシスは細胞の増殖能が高いときにも観察され、この過程は、midocondrial permeability transition(MPT)を介した機序によって起こることも共焦点顕微鏡による生細胞を用いた画像解析で明らかとなった。 以上の結果より、アルコール性肝障害における肝類洞内皮細胞の傷害は、肝再生過程にある増殖期にある内皮細胞にも起こりうると考えられ、このことが肝再構築過程の遅延に関与している可能性が示唆された。
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