目的:未治療の(drug-naive)精神分裂病患者を対象として、種々の抗精神病薬の慢性投与による脳への作用をSPECTによる局所脳血流(rCBF)の変化を指標として探る目的で、今回はハロペリドールの経口投与による作用を検討した。 対象と方法:現在までに施行できた未治療の精神分裂病患者は10例(男性4例、女性6例、19〜30歳、罹病期間3〜10年)で、初診時の精神病像については全例で幻覚・妄想状態(幻聴や奇異な被害関係妄想が主体)がみられた。全例でSPECT検査施行に先立ち、患者本人と保護義務者に研究の主旨を説明し、両者から文書で同意を得た。なおSPECT検査の費用は全額本科研費で負担した。方法は初診日または初診後2〜3日以内でPANSSによる精神症状評価と第1回目の安静覚醒時における^<99m>Tc-HMPAOによるSPECT検査を施行した。その後、ハロペリドール4.5mg/day(症例によっては2.25mg/dayより漸増)、ビペリデン3mg/dayを経口投与し、また症例によっては睡眠薬(主にハルシオン0.25mg/day)を眠前に投与した。これらの眠薬を2週間続けた後、再度PANSSによる精神症状評価と第2回目の安静覚醒時における^<99m>Tc-HMPAOによるSPECT検査を施行した。なお全例にMRI検査を施行した。SPECT画像の解析はMRIとの融合により種々の高さのスライスで左右合計54ヶ所のROIを設定し、rCBFの絶対値を測定した。 結果と考察:ハロペリドールの投与前後のSPECTの個々のROIにおけるrCBF絶対値の統計解析(MANOVA)で、投与後のrCBFの有意な減少がみられ、これはとくに両側orbitofrontal cortexで顕著にみられた。(p<0.05)。また右のmiddle or inferior frontal cortexのrCBFと幻覚や妄想との間に有意な相関が見られた(p<0.01)。これらの結果はハロペリドールの脳機能への影響に部位特異性があること、また前頭葉の機能が幻覚や妄想の発現に関係することを示唆する。
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