研究概要 |
乳癌の骨転移は造骨性・溶骨性の混合性骨転移をきたすことが特徴であるが、その機序にいての検討は殆どない。また、transforming growth factor(TGF)-β以外のTGF-β superfamily proteinの乳癖細胞における増殖、分化調節に対する関与についても報告は少ない。bone morphogenetic proteins (BMPs)は最も強力な骨形成因子であり、前立腺癌の骨転移においてはBMPとの関係も報告されているごとから、乳癌細胞におけるBMPおよびその受容体の発現について検討を行った。1)乳癌手術材料におけるBMPsの発現:乳癌組織におけるBMPs及びBMP-receptorの発現をRT-PCRを用いてさらに多数例で検討し、全ての乳癌サンプルにおいて複数のBMPsが発現していたが、やはり骨転移との相関が認められたのはBMP-6の発現であった。一方BMP-receptor type1,2の発現はほぼ全ての乳癌サンプルに認められ、骨転移との相関は認められなかった。2)乳癌細胞株に対するBMPの影響:乳癌細胞株6株について、BMP-2/BMP-4による増殖に対する影響の有無を検討し、BMPはestrogen receptor (ER)陽性細胞株(MCF-7,ZR-75-1)において明らかな増殖抑制効果を示し、estradiolはBMPの増殖抑制効果に完全に拮抗した。この効果がどのような機序を介しているかを検討するため、まずMcF-7細胞にERE-Luciferaseを導入してestrogenによるER活性の亢進に対するBMPの効果をみたところ、影響は認められず、ERを介してはいないことが明らかになった。さらにSTAT等の転写因子に対する影響を検討中である。3)BMPと骨転移形成能との関係:マウス左心室に乳癌細胞株を注入する骨転移モデルおよびマウス乳房に乳癌細胞株(4T1)を注入する骨転移モデルを確立し、BMPまたはBMP receptor発現レベルの違いによる骨転移能の差、BMP発現抑制による骨転移抑制の有無を検討している。
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