研究概要 |
これまで,1)ラット小腸粘膜上皮細胞の加齢に伴う増殖能の変化(平成10年度),2)ラット小腸阻血再潅流障害モデルにおける絨毛細胞の脱落と再増殖の機序(平成11年度),および3)小腸大量切除後の残存小腸の代償的粘膜増殖(平成12年度)に関して研究を行ってきた。 1)では,72時間絶食後の摂食による小腸粘膜の再生増殖を幼少ラットと成熟ラットとで検討した結果,幼少ラットでは絶食解除後早期から小腸粘膜におけるc-fos, c-jun mRNAの発現が増強し,増殖活性は増加したが,成熟ラットではこのような反応はみられず,加齢によって小腸粘膜の増殖能が低下することが明らかになった。2)では,再灌流後早期から小腸粘膜におけるc-fos, c-jun mRNAの発現増強と増殖活性の増加がみられたが,同時にアポトーシスも出現し,しかもc-Fos, c-jun蛋白の発現部位と一致しているという興味ある知見が得られた。3)では,残存小腸粘膜におけるc-fos, c-Jun mRNAの発現は大量切除後早期から増強し,増殖活性も増加していた。そして,小腸粘膜の蛋白合成能やALP活性が亢進し,形態的にも機能的にも代償帰転が働いていることが観察された。以上の研究結果から,種々の病態下における小腸粘膜の再生増殖にはc-fos, c-jun遺伝子が重要な役割を演じていることが示唆される。 本年度は,これらの遺伝子群の上流にある細胞内シグナル伝達系を,ラット小腸阻血再灌流モデルを用いて検討した。阻血再灌流後の空腸粘膜を採取し,EMSA法にて転写因子NF-κB, AP-1などの活性化が確認された。
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