研究概要 |
多くの過程より成る癌の転移機構に、我々はこれまで肺癌で転移を接着分子と癌細胞の産生するサイトカインを中心に検討してきたが、このうち接着分子CD-44にはいくつかのスプライシングバリアントが存在し、肺癌細胞ではこれらが外的な刺激により誘導、促進されることを見い出した。そこで、CD44のリガンドの一つヒアルロン酸(HA)に対する結合能は,バリアントの存在とHAへ結合性が見られた。オステオポンチンは別のCD44の受容体で、これを過剰発現する細胞は転移能が高いと報告されておりが、骨軟部腫瘍細胞株の5株(30%)および肺癌細胞株2株(14%)でmRNAの発現を認め、このうちの1例は骨転移巣から樹立した株である。 ヒト骨軟部肉腫患者の多くは肺転移にてて亡くなる。さらにヒト線維芽肉腫のヌードマウスでの自然肺転移腫瘍細胞にプラスミノーゲンアクチベーター(PAI)の増加とuPAの減少が報告されている。そこで、このPAIとuPA mRNAの発現をヒト骨軟部腫瘍細胞および肺癌細胞株で検索ではPAIはおのおの87%、70%で、また、uPAは肺癌の70%で認められた。さらに癌細胞の接着、遊走、浸潤、血管新生に関わっているが蛋白トロンボスポルジン-1(TSP-1)は癌細胞のPAIとuPAを促進するとされており,肺癌細胞株でのTSP-1 mRNAの発現は78%の細胞で確認されたことより、これらを遺伝子を発現する細胞が転移に積極的に関与いるると考えられた。最近、転移制御遺伝子として報告されているKiSS-1 mRNAの発現は肺癌株の50%と骨軟部腫瘍の60%で認められた。 ヒトの癌転移を解析する唯一のin vivoモデルとしてヌードマウスがあるが、このモデルの異所性移植では、一搬に,肺転移は生じないが、然しながらこのモデルで自然肺転移する肺癌細胞株をわれわれは樹立し、転移制御遺伝子の検索をする準備中である。
|