我々は、ヌードマウスの異所性移植にて転移するヒト肺癌細胞株HALから、選択・分離した高転移性株HAL-8と非転移株細胞HAL-24を研究材料に、サブトラクション法を用いて新しい転移制御遺伝子の検索を行った。 このHAL両細胞間にてこの法を実施して、高転移性株HAL-8に発現している遺伝子断片を得、これをプラスミドベクターに組み込み大腸菌に発現させた後、DNAを抽出して塩基配列決定し、データーベースにてこれらの遺伝子の検索した。発現の検出された遺伝子断片はチトクロームオキシダーゼ等のミトコンドリア遺伝子、リボゾーマル蛋白関連の遺伝子、肺サファクタント、乳酸脱水素酵素、エンドブレビン、マウス筋蛋白、血小板活性因子、ラミニンレセプターおよび既存の遺伝子と一致しない未知の遺伝子断片を得た。後者の遺伝子は胎盤絨毛に弱い相同性を有する全く新しい遺伝子であった。 受精卵が絨毛細胞を経て胎児形成にたどる過程は癌細胞の転移と酷似のものであることから大変興味があり、これを解析することで新たな癌転移機構を解明するのに有益な情報が提供できるものと思われる。
|