研究概要 |
顆粒球コロニー刺激因子G-CSFの骨代謝調節機序を解明することが,研究の目的である.ヒトG-CSFを過剰発現したトランスジェニックマウス(G-Tg)を作製し,その骨組織の検索を行った.昨年度までに明らかになったことは以下のとおりである. 1)G-Tgは全身性の骨粗鬆症を発症する. 2)G-Tgの骨組織では破骨細胞数が増加し,その結果骨吸収が亢進している. 3)G-TgではBMP-2によって誘導される異所性骨化が抑制される. 今年度の研究実績は以下のとおりである. 1)G-Tgにおける骨芽細胞と破骨細胞の分化能の検討 (1)G-Tgと対照マウスの骨髄細胞を培養し,骨芽細胞と破骨細胞への分化を誘導した.G-Tgの骨芽細胞前駆細胞数は対照マウスに比べ減少していた.一方,破骨細胞前駆細胞数はG-Tgで増加していた。 (2)対照マウス頭蓋骨から採取した骨芽細胞様細胞とG-Tgの骨髄細胞を共存培養すると、対照マウスの骨髄細胞に比べ破骨細胞形成能が有意に高かった.G-Tgの頭蓋骨から採取した骨芽細胞様細胞と対照マウスの骨髄細胞を共存培養すると,対照マウス同士の共存培養に比べ破骨細胞形成能が高かった. 2)骨髄中の造血系細胞の変化と骨量減少との関与につき卵巣摘除(OVX)マウスと比較して検討した。 (1)対照マウスに卵巣摘除を行うと,G-Tgと同程度の骨量減少が観察された。G-Tgに卵巣摘除を行っても,それ以上の骨量減少は起こらなかった. (2)対照マウスに卵巣摘除を行うと,骨髄中のCFU-GMがshamマウスに比べ約2倍に増加した.この値はG-Tgの骨髄中のCFU-GMに相当した. (3)対照マウスに卵巣摘除を行うと,B220陽性細胞が増加した.G-Tgの骨髄ではB220陽性細胞数は低値であり,卵巣摘除を行っても陽性細胞数の増加はみられなかった. G-CSFは,骨髄細胞の破骨細胞への分化能を亢進させる可能性がある.その機序には,骨芽細胞の破骨細胞分化誘導能の亢進が関与していると考えられた.
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