細菌性スーパー抗原やLPSが免疫担当細胞との関わりを通して、歯周病にどのような役割を果たしているのかを明らかにする目的で研究を行い、以下の成果が得られた。スーパー抗原は末梢血中の単球のCD80の発現を増強し、過剰な活性化T細胞(CD27^<high>)を誘導する。一方、LPSの存在下ではCD80^+単球が減少し、CD28/CD80を介したT細胞への補助シグナルが不十分になり、T細胞の活性化が抑制されることはすでに示した。さらに、検討を重ねた結果、この現象には単球のアポトーシスが密接に関与していることがわかった。すなわち、スーパー抗原は単球のFas抗原の発現を増強することにより、選択的にCD80^-単球のアポトーシスを誘導し、LPSはFas抗原を抑制することにより、スーパー抗原により誘導されるアポトーシスを防御した。また、スーパー抗原がFas抗原を介してアポトーシスのシグナルを単球に送ることは、抗Fas抗体や抗Fasリガンド抗体による抑制実験により証明された。これらの処理実験によって、CD80^+単球数は変動しなかったことから、以下のことが予想される。末梢血中に存在する少数のCD80^+単球はFas抗原を介したアポトーシスに抵抗性であり、スーパー抗原によるCD80^-単球のアポトーシスの誘導により、結果としてCD80^+単球の割合が増加し、T細胞に補助シグナルを効率よく送ることが可能となる。しかしながら、LPSはCD80^-単球のFas抗原の発現を抑制し、アポトーシスを防御することにより、T細胞への補助シグナルを抑え、T細胞の活性化を阻害する。以上の結果より、本研究ではヒトの末梢血を用いて実験を行ったが、歯周組織でも同様の免疫現象が起こっているものと考えられ、生体は代表的な細菌成分を利用し、過剰な免疫反応を防止しており、その破綻が歯周病の原因の1つとなるものと思われる。
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