研究概要 |
我が国は高齢化社会が急速に進行しており,加齢や骨粗鬆症などの宿主の変化に対して,生体内に埋入された材料が及ぼす影響について明らかにすることが急務となっている.本研究では,骨粗鬆ラットや老齢ラットの脛骨に埋入し,生体材料と骨質の経時的相互作用を明らかにすることを目的とし,以下の検討を行った. 1. 骨粗鬆症モデルラットの確立について 本研究では,経産の30-32週齢のラットの卵巣を摘出し,その後0.5%カルシウム調整飼料を与えたところ,16週後には大腿骨遠位端における骨密度が偽手術を行った群と比べて45%となり,骨量の有意な減少が認められた. また,これらのラットには栄養不足による体重減少も認められなかった. 2. 骨粗鬆症ラットへのインプラント埋入とその後の周囲骨組織の変化について 上記の方法によって骨粗鬆症モデルラットが確立されたことから,ラット脛骨にあらかじめアパタイトおよびチタンインプラントを埋入しておき,骨組鬆症を発症させたときの周囲骨の組織学的検索を行った.未脱灰標本の弱拡大での観察により,インプラント周囲の海綿骨の著しい減少が認められた.この傾向は,アパタイトよりもチタンで著しかった.インプラント骨界面に注目してみた場合,アパタイトでは骨との接触が失われ,種々の貧食系細胞を含んだ線維性組織が介在していたが,チタンではこのような所見は認められなかった.このように,埋入された材料によって周囲骨組織の反応は大きく異なるため,高齢者へのインプラント埋入について改めて考え直す必要があると考えられた.来年度には,これら観察結果を客観的に評価するための定量的データの採取を行う予定である.
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