研究概要 |
本研究では,脛骨にインプラントを埋入した後卵巣摘出を行い,骨粗鬆症を発症したラットにおけるインプラント周囲骨組織の経時的変化を観察した.昨年度は経産の30-32週齢ウィスター系の雌性ラットを用い,まず,円柱状のハイドロキシアパタイト(HA)および純チタン(Ti)を64匹のラットに埋入した.6週間後,28匹は卵巣摘出(OVX)を,26匹は偽手術(sham)を行い,残り10匹はコントロールとしてこの時点で処理した.本年度はOVXおよびsham群の4,8,16週後のインプラント周囲組織を組織学的に観察した.その結果,以下のような知見が得られた. 1)OVX群の体重は,sham群のそれと比べて,著しく増加した.また,大腿骨近位端の海綿骨量は,sham群のそれと比べて有意に減少した.このことは,この実験モデルが骨粗鬆症の病態を反映するものであると考えられた. 2)HA埋入群では,海綿骨における骨梁が,OVX群ではSham群に比較して減少したが,16週後においても観察された.しかし,インプラントと骨との界面に結合組織が観察され,それは経時的に大きくなる傾向にあった. 3)一方,Ti埋入群では,海綿骨における骨梁が,OVX群においてはほとんど観察されなくなった.しかし,インプラント周囲を取り巻く骨は存在し,その骨幅は,経時的に増加する傾向にあった. このようなことから,骨粗鬆症を発症した場合のインプラント骨界面における骨反応は,HAとTiでは大きく異なることが示された.
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