研究概要 |
ペプチド性貝毒:コノトキシンは,イオンチャンネルに結合してその機能を特異的に阻害する。最近,硫酸化の修飾を受けた数種のα-コノトキシンの単離が報告されたので,硫酸化による本ペプチドの生物活性や立体構造への影響を調べる目的で研究を行い,本年度は以下の知見を得た。 (1)著者らが開発した硫酸化チロシンをbuilding blockに用いる新規固相合成法を2組のジスルフィド結合を含む硫酸化コノトキシンの合成に適用するため,まずオキシトシン(硫酸化体)をモデルとしてCysの保護基の除去,及びジスルフィド形成反応に関する実験を行った。トリチル(Trt)基を保護基として用いた場合,0℃でトリフルオロ酢酸(TFA)によりTrt基を除去したのち空気酸化することで,また,アセトアミドメチル(Acm)基を採用した場合,50%酢酸中低温下でI_2(ヨード)で処理することでAcm基の除去と引き続くジスルフィド形成反応を硫酸エステルの損傷を伴うことなく行えることがわかった。一方,TFA(0℃)中でスルホキシドとシリル化合物を組み合わせてAcm基の除去とジスルフィド形成反応を行う反応では,大量の脱硫酸化体の生成が認められた。 (2)4残基のCysにTrt基を保護基として採用し,α-コノトキシンEpI(硫酸化体)のシークエンスをFmoc固相法で構築した。95%TFA-5%トリイソプロピルシラン(0℃)でTrt基を含めた全保護基の除去と樹脂からのペプチドの遊離を行い,ついで空気酸化により効率よく2組のジスルフィド結合を形成できた。この一連の反応中,硫酸エステルはほとんど損失されなかった。 (3)現在,2種類のCys保護基を用いて,2段階で選択的に2組のジスルフィド結合を形成させる方法を検討している。 なお,本年度の成果を日本薬学会年会(3月)およびペプチド討論会(10月)で報告する予定である。
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