研究概要 |
平成12年度(最終年度)では,過去2年間でデータが蓄積された短距離走を対象にして,最適化システム(ループ)の有効性を詳細に検討するとともに,導入した筋骨格モデリングシステム(以下,SIMM)の運用法およびスポーツ動作解析への適用可能性を検討した. 1.短距離走動作の最適化効果の検討 平成11年度に収集した陸上競技選手(同好会)13名の疾走動作に関するバイオメカニクス的データを分析し,練習の効果を発揮された関節トルク,力学的エネルギーおよび有効性の観点から検討した.その結果,支持期では,接地脚の股関節伸展トルクおよび回復脚の股関節屈曲トルクの増加によって支持脚の大きな屈曲,いわゆる「つぶれ」が小さくなり,回復脚の引出しが早くなったこと,回復期では回復脚の膝関節力によるモーメントが下腿の巻き込み過ぎを抑制したことなどが明らかになった.また,最適化の効果の表れ方には,力学的エネルギーの増す「総仕事増加型」と有効性の増す「有効性増加型」がみられることがわかった. 2.筋骨格モデリングシステムの運用法の検討 本モデリングシステムの運用法を検討するため,2名の男子大学中距離選手に3種の足の接地法(固有,足先接地,踵接地)および異なる走速度で疾走させ,動作に関するバイオメカニクスデータをforce platform法,VTR撮影法,筋電図法により収集し,SIMMに入力して,関節の合成トルク,パワー,個々の下肢筋によって発揮されたトルクなどを推定した.その結果,合成関節トルクやパワーによっても接地法や疾走速度の下肢筋群への影響をとらえられるが,SIMMを用いることによって,筋長変化および筋の伸張短縮速度の影響を反映した筋トルクの変化(例えば,足先接地ではひらめ筋のトルクが大きく,また立ち上がりも早いこと)を推測できることがわかった.しかし,短距離走のように大きな筋出力が伴う場合には,SIMM内部の筋の力学的特性係数を変更する必要があるなど,スポーツ動作への適用および運用にはさらに改善が必要なことがわかった.
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