研究概要 |
本研究では,骨格筋モデル,コンピュータシミュレーション手法を導入したスポーツ技術の最適化システムを開発するため,最適化ループを用いてスポーツ動作の改善を試みること,筋骨格モデリングソフト(以下,SIMM)の運用法を研究することを目的とした. (1)メディシンボール投げおよび立幅跳を例にして,練習前後における被験者の動作をVTR動作分析法およびフォースプラットフォーム法を用いてパフォーマンスやこれらの測定項目を練習前後で比較した.その結果,バイオメカニクス的手法はスポーツ動作の分析のみならず,改善のための示唆を引出し,技術トレーニングにも有効なことが明らかになった. (2)陸上競技選手(同好会)13名にスプリント動作の技術トレーニングを行わせた.技術トレーニングでは,動作の分析結果にもとづいて技術的課題の修正法(脚の流れの改善法,股関節の動かし方など)を教示したのち,疾走動作をVTRで撮影し,直ちにVTRモニターで動作を検討するという過程を繰り返した.その結果,大部分の被験者が疾走速度の増大を示すとともに,疾走動作の変化を示した.疾走動作をバイオメカニクス的に検討した結果,多くの場合,ピッチが増大し,股関節を介して大腿に伝達される力学的パワーが大きくなっていることがわかった. (3)男子大学中距離選手(2名)にレーススピードの60%で疾走させ,逆動力学的手法およびSIMMを用いて,下肢関節のトルク,トルクパワー,下肢筋群の筋トルクなどを推定した.その結果,SIMMを用いることによって,筋長変化および筋の伸張短縮速度を反映した筋トルクの変化を推測できることがわかった.しかし,SIMM内部の筋の力学的特性に関する係数を変更する必要があるなど,スポーツ動作への適用および運用には解決すべき問題点が少なからずあることがわかった.
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