日本各地の家々における食事記録の収集とその特徴を明らかにするため、平成10年度は、各地域の図書館、資料館等に残された各家の文書を調査した結果、郷土資料として家の文書が残されている例は多いが、食事記録は多いとはいえない。その中で、収集した記録のうち、とくに特徴的な食事記録は下記のようなものであった。 1. 毎日の食事記録史料について 信濃松代藩の御用商人をつとめた八田家文書のなかに、松代藩主真田家の御膳番に提供したとみられる食事の日記『御膳日記』が、寛政12、13年、享和元年について残されている。朝、夕、夜食の献立がほぼ毎日記述されている。飯、汁、平皿にさらに1品加わった構成が朝、夕食の典型的なもので、夜食はさらに1品少ない。この背景を明らかにするためにも、同時に真田家に残されている『御膳番による日記』を一部撮影した。 2. 婚礼の献立・葬儀などの献立 婚礼については、断片的なものが多いとはいえ、文化・文政期以降の史料は、いくつか収集できた。いずれも本膳料理に式三献を組み合わせた形であるが、人の並び方、招待客などの違いによる料理内容、材料等に違いがある。今後精査する予定である。葬儀については献立が残されているところが少なく今後収集する予定である。 3. 生間流万亀楼文書の献立 京都の生間流包丁人の残した献立は、二条行幸の献立記録で、上層の献立を知る上で貴重なものと思われる。現在これらを目録化し、複写および写真撮影を行ったので、次年度は引き続き新たな史料を発掘するとともに、これらの内容を調査し、順次発表を行う予定である。
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