<目的・方法>日本の近世・近代における日常食と饗応食の構造的特徴を明らかにするためには、出来るだけ具体的な史料を数多く掘り起こし、これらを調査・分析する必要があると思われる。そこで、各地域の家に残された文書を調査し、その食事記録に関する史料を掘り起こし、その特徴を解明しようとした。 各図書館・文書館の家文書の調査および未公開の家文書を調査し、その食事記録を収集して目録を作成し、一部史料についての分析をおこなった。 <結果・考察>全国の各図書館の史料のうち、食に関する記録が比較的まとまった形で残されているものは、多くはなかった。比較的多くの史料がある家文書のなかで、下記に関する目録を作成した。 (1)真田家文書、(2)八田家文書、(3)小川家文書、(4)佐藤家文書、(5)千秋家文書、(6)玉尾家文書、(7)土屋家文書、(8)大炊御門家文書、(9)美濃高木家文書、(10)古橋家文書、(11)その他 これらの文書は、公家(8)、武家(1)(7)、商家(2)(3)、農家(4)(5)(6)に属するものであり、婚礼、葬儀などの人生儀礼に関する献立などの記述が中心となったが、(2)の文書にみられた「御膳日記」は、調査の結果、(1)の真田家の元藩主真田幸弘の食事記録と推察された。この日記は、毎日三食の記録があるため、日常食とハレ食の両方の関係がわかる貴重な史料といえる。しかし、献立のみの記述であるため、真田家の他の文書をあわせることで、どのような状況下で用意された食事であるかをさらに明確にする必要があろう。
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