研究概要 |
放射化分析は試料の形状に制限がなく,多元素定量が可能な分析法として環境試料などの微量元素分析に用いられているが,より分析感度を向上させるために,原子核物理学などで,放射線の相互関係を測定するために使われているリストモード多重波高分析器を改良して,エネルギー情報と同時にその入射した時刻も収集できるタイムリストモードを用いたマルチパラメータの多重波高分析システムの開発を行った。そして,2台のγ線検出器のγ線相関を利用して,ガラス,青銅器,鉄器,土器,絵画などの考古学的遺物中の主要元素から微量元素まで多数の元素の高感度分析を行うことを目的としている。2台のγ線検出器(既設のGe半導体検出器及び井戸型NaI(Tl)検出器)からのγ線の同時分析を行うため,同時データの処理・解析用のコンピュータ及びリストモード用のコントローラーボード等を購入し,γ線スペクトルのリスト測定の時間幅の調整などを行った。立教大学原子炉で照射を行った試料により,カスケード状にγ線を放出して壊変する放射性核種の中でも^<75>Se,^<131>Ba,^<181>Hfを中心に一番高感度になる最適な条件を決定することができた。鉄遺物を中心とした各種の分析試料に対して,^<75>Se,^<131>Ba,^<181>Hfを用いて,セレン,バリウム,ハフニウムの分析をこのγ線相関を利用した放射化分析で行い,通常の放射化分析では定量できない微量までも定量できることを確認した。今後は,カスケード状にγ線を放出して壊変する別の放射性核種についても分析ができるようタイミング調整を行う。さらに多様な試料に応用できるよう,分析試料の調製及び照射方法の検討,並びにγ線エネルギー幅を限定した同時計数の三次元スペクトルの表示方法及び時間情報を加えたγ線スペクトル解析方法などの検討を進めて行きたい。
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