研究概要 |
放射化分析は試料の形状に制限がなく,多元素定量が可能な分析法として環境試料などの微量元素分析に用いられているが,より分析感度を向上させるために,壊変時にカスケード状にγ線を同時に放出する核種に対して,コンプトンバックグラウンドを低減できる同時計数法の検討を行った。同軸型Ge検出器とその周りをコンプトン散乱γ線検出用の井戸型NaI(Tl)検出器で囲んで同時計数法で測定し,マルチパラメーターMCA(マルチチャネルアナライザー)を用いて同時計数スペクトルと同軸型Ge検出器のみの通常計数法のスペクトルを同時に得ることができるシステムの開発を行った。 γ線相関では,Ge半導体検出器からの1024チャネルデータと井戸型NaI(Tl)検出器からの512チャネルデータを収集して,ソフトウェアで,任意のエネルギー範囲と同時計数したGe検出器のスペクトルを作成できるシステムとした。4種類の標準物質(河川底質,Typical Japanese Diet,耳石,河川水)を用いて,システムの性能を測定し,7元素(Se,Hf,Ba,Cs,Co,Sb,Sc)について通常の放射化分析法と比べて微量まで定量できることを確認した。 この成果をもとに,トルコ共和国のカマン・カレホユック遺跡から出土した鉄遺物の分析を行った。10種類の遺物について,試料量約50mgを立教大学原子炉で6時間照射し,本システムで測定を行い,微量元素を多元素同時定量することができた。
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