今年度は、東京都世田谷区で高齢者向け食事サービス活動をおこなっている住民組織(NPO)のボランティアと利用者を対象にアンケート調査を実施した。単純集計及び、文献資料、ヒアリング資料等の考察による今年度の成果の概略は、以下のとおりである。 (1) 組織の現局面:組織の継続にともなってボランティアの高齢化がすすんでいる。当初、若手主婦が近隣の高齢者を支援する活動であったが、高齢ボランティアが高齢者を支える部分が生じてきている。さらに、大多数のボランティアが体力の続く限り活動を続け、多くはその後自組織のサービスの利用者に移行したいと考えている。これの過程は、住民の相互扶助の重層的な展開とみなすことができる。 (2) 組織運営の課題:活動の種類や活動場所が多岐にわたることにより、ボランティアの参加が断片的になっている。その対策の一つとして重要な役割を期待されるのが、現在、多様な情報の結節点となっている事務局とコーディネーターである。事務局が設置されている本部では、同時に食事サービス活動等がおこなわれており、情報の結節には空間的要素も大きな役割を果たしていると考えられる。 (3) コミュニティ形成に関して:ボランティアは7割以上が週に一日以上活動しているが、利用者の増加にともない負担が増えている。高齢となっても参加し続けられる組織づくりはボランティア不足への対策ともなる。リーダーや非ボランティアと比べると、ボランティアの要望には、身近な場所に活動の施設をつくることと、動きやすい空間を整備することに特徴がある。これは、上記の点とあわせて、コミュニティ施設の配置・整備に関する課題として位置づけることができる。 来年度は、他地域の複数の食事サービス団体に同様の調査を実施し、比較検討する。それをふまえて、都市コミュニティの形成に果たす事業型の住民組織(NPO)の役割と課題に関してまとめる計画である。
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