イスラームの信仰実践において、聖者という個人がいかに焦点となり、人々の信仰の具現化に与っているかを明らかにする本研究において、二ヶ年中の初年度である本年は、調査資料と文献の収集および整理を行って、成果発表の準備を整えることに重点が置かれた。データの再整理に関しては、なお、一部が画像データに未変換のままであるが、遠からず完了できる予定である。文献収集については、今のところ、充分とはいえず、予定よりも未入手に終わっている文献がかなりあり、各方面に当たって入手を急いでいる。なお、平成10年8月モロッコ出張の際に、意想外のアラビア語資料を数点収集できたことは、大きな収穫であった。 年度後半において発表を予定していた学術論文1編は、準備途上において英文での著述に切り替えており、今なお若干の時間を要する。しかしながら、平成11年2月にすでに"Ziyara and Saint Veneration among the Bedouins in the Western Desert of Egypt"と題する口頭発表を行っており、すでに草稿は完成しているので、ほどなく出版される見込みである。ちなみに、この発表は、平成10年度文部省科学研究費補助金創成的基礎研究「現代イスラーム世界の動態的研究」の分担者として、本研究代表者本人が組織した国際ワークショップZiyara:Ethno-Historical Studyof Muslim Visitation to Religious Placesにおいて行われた。 あわせて、アラビア語WINDOWS95を使用できる環境を整え、CD-ROM版クルアーン(全文検索機能付き)をはじめとするいくつかの電子的資料を使用することが可能になった。いまだ、日本語のソフトウェアとの併用はごく限られた範囲でしか可能となっていないが、これについても情報を収集し、可能性を探求している。
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