研究概要 |
競争優位性という視点から「経営の情報化」を鑑みるさいに,取引コスト削減などの経済性だけでなく,情報資源を体系的に活用する「知」の力に注目する必要がある.このことが本研究のテーマである. 本年度は,NTTや大阪ガスなどの企業インタビューと文献サーベイを行うことにより,情報資源活用能力を涵養するための方法論的特徴を解明することに成功した.学会の全国大会や私的研究会での報告を基に議論の精緻化を行い,学会誌に投稿した論文が採択された. そこでは、組織成員一人ひとりの創造性を支援するための情報資源管理のアプローチを提唱した.音楽のメタファーを用い,「優れた譜面づくり」と「即興演奏」という2つの情報資源管理アプローチを整理した従来の情報化アプローチでは,優れた譜面づくりに重点が置かれていた.しかし,組織成員一人ひとりが情報技術を活用する主体となった今日では,計画指向型アプローチでは不十分ではない.むしろ,一人ひとりが自由な発想で情報資源を活用しようとする「即興演奏」の視点が重要になってくる.情報ないし情報技術を解釈し直すことにより,新しい意味を生み出すような活用方法が,即興演奏なのである. これは,ミクロ組織論の視点からの議論である.他方,秋の学会では,マクロ組織つまり紹織構造の視点からは,ビジネス・システムの設計思想とは何かについて「知力」との関係性から報告を行った.これについては,まだまだ不十分な点が多く,残された課題も少なくない.そこで次年度は,マクロ組織からの視点を整備するとともに,本年度の研究成果であるミクロ組織からのアプローチとの橋渡しを行うことを課題としたい.
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