土木構造物において、交通荷重や風等に起因する振動に対してその安定性を向上させることは、構造物の耐久性、使用性等を改善する観点から、極めて重要な一項目であると考えられている。 本研究では、ケーブル構造を有する橋梁構造物の鉛直振動を対象として、その制御力付加方法に可変剛性型システムを導入し解析を行うことにより、その適用性、制振特性等に関して考察を行うことを目的とする。具体的には、吊床版橋等を想定したケーブル構造を有する実験供試体を製作し、この供試体を5質点系にモデル化することにより数値解析を実施した。制御力の付加は、制御対象のケーブル張力を直接変化させることにより構造物の全体剛性を変化させている。制御理論には瞬間最適制御理論ならびにFuz分制御理論を採用し、可変剛性型システムの適用性のみならず、制御理論による制振効果の差違およびFuz分制御理論における設計手法に関しても合わせて検討を実施した。Fuzzy制御の設計には、メンバーシップ関数や制御規則の最適化等に遺伝的アルゴリズム(以下GAと称する)を用いることとした。 解析結果からは、GAによって最適化されたFuzzy制御理論を適用した場合が最も効果が高く、その制振特性は著者らの従来の研究と一致することが確認された。また、強制振動に対する解析結果から、本研究で用いた全ての質点で個別に制御張力を計算し、その中で最大のものを制御張力とする方法は、良好な効果を上げているものと考えられる。また、Fuzzy制御理論の設計に際して、GAによって-メンバーシップ関数の同定を行うことは、従来の方法に比して簡便に有効な制振効果を得られることが確認できた。以上より、橋梁構造物の振動制御に対して、Fuzzy制御理論を用いて可変剛性型システムを適用することにより、複数の振動モードの同時制振が可能であると考えられ、非共振化も期待できることから、このような構造物の制御に関して有効な手法の一つであると考えられる。
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