研究概要 |
近年、好中性菌の代表的な枯草菌の細胞内pH調節に関与する遺伝子群mrpオペロンの生理的役割を著者とマウントサイナイメディカルセンターのKrulwich教授らのグループで明らかにした。今回、大腸菌を宿主として好アルカリ性細菌の中で最も生理的機能の解析が進んでいる好アルカリ性Bacillus firmus OF4株から、このmrpオペロンのクローニングを試み、全塩基配列を決定した。この塩基配列は、DNA塩基配列のデータバンクであるGenBankに登録した(アクセス番号:228795)。本遺伝子群は、オペロンを形成し7つの構造遺伝子から構成されていることが明らかになった。遺伝子解析ソフトを利用した解析から、これら7つの遺伝子にコードされているタンパク質は、いずれも疎水性が高く、膜に局在するタンパク質であることが示唆された。データベースを用いたホモロジー解析よりmrp遺伝子群と相同性のある遺伝子群が、ブドウ球菌、Rhiobium meliloti,Bacillus sp.C-125株から報告されていることが明らかになった。この中で、Bacillus sp.C-125株とのタンパク質レベルでの相同性が最も高く、約75%の相同性があった。OF4株におけるmrpオペロンの生理的機能を解明するために、染色体DNA上のmrpオペロンをDNAの相同的組換え技術により構造遺伝子の一部を欠損させた変異株を現在作成中である。初期的な実験結果より、本領域がアルカリ性細菌のナトリウムサイクルに中心的な役割を果たしていることが示唆された。今後は、変異株の取得と変異株の生理的機能解析を中心に研究に取り組む予定でいる。
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