1) 蛍光色素をラット尾静脈、あるいは脾臓から注入し、標識された白血球が肝に到達するかどうかを生体蛍光顕微鏡ビデオ観察・解析システムを用いて検討した。 (方法) 4週齢のWister系ラットをエーテル麻酔下に開腹し、肝左葉を脱転後、肝類洞の血行動態を観察するため肝表面にスライドグラスをのせ、生体蛍光顕微鏡ビデオ観察・解析システムにより観察した。この間、血行動態に著明な変化がないことを血圧及び血液中の酸素、二酸化炭素をモニターして確認した。続いて、速やかに経脾臓的にFluorescein Naを投与し、血清を蛍光標識したのち、同様の経路でRhodamine 6Gにより白血球を蛍光標識して、前述のシステムにより、計時的に肝類洞内の白血球動態をビデオ撮影した。同様に経尾静脈的に投与も試みた。 (結果) 経脾臓的に蛍光色素を投与した場合、標識された白血球は速やかに肝類洞内に達した。穿刺部位からの出血もほとんど見られなかった。一方、尾静脈からの投与では、標識された白血球が大循環系に入り、肺を経由するため、肝類洞内に達するまで、若干の時間を要した。 (考察) 蛍光標識した細胞の投与経路を検討し、その結果、経脾臓的に投与するのが最も安定していると思われた。 2) 我々の樹立した胆道癌細胞株にGFPベクターを現在導入中であるが、本実験に使用可能となるには、更に時間を要する見込みである。そこで、GFPベクターを導入した肉腫系のcell lineを用い、生体蛍光顕微鏡ビデオ観察・解析システムによる観察を行なった。投与した細胞数は1X10^6個であった。 (結果) GFPの蛍光は大変微弱で、観察は困難を極めた。また、投与後に摘出した肝臓を組織学的に検討したが、肉腫細胞は検出できなかった。 (考察) 投与経路を尾静脈にしたため、肉腫細胞の多くが肺でトラップされてしまった可能性が考えられた。また、GFP専用の蛍光フィルターの設置が遅れ、本実験では通常のフィルターを用いたため微弱な蛍光を検出できなかったと思われた。
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