研究概要 |
高気圧酸素療法を2気圧以上で行うと、全身性の痙攣を起こすことがある。しかしこの痙攣が脳内のどの部位から発生するか、いまだ解明されていない。近年、転写制御因子であるc-fos蛋白が、神経の異常興奮した領域で発現することが報告された。本研究はc-fos蛋白が発現した領域を免疫染色で特定し、痙攣の発生部位を明らかにすることを目的としている。本年度は3気圧の高気圧酸素療法でラットに痙攣を起こし、2時間後、24時間後ににc-fos蛋白に対する免疫染色を施行した。痙攣発生3時間後に4%のホルムアルデヒド溶液で潅流固定し、ビブラトームを用いて矢状断の切片(厚さ50μm)を作成した。切片に対し一次抗体(抗c-fos抗体、ウサギで作成)、二次抗体(ビオチン化抗ウサギ抗体)、三次抗体(オキシダーゼ付きストレプトアビチン)を使用し、最後に過酸化水素と3,3′-diaminobenzidineを用いてc-fosを可視化した。痙攣2時間後の免疫染色では、梨状皮質、頭頂葉、海馬、歯状回、下丘にc-fos蛋白の発現を認めたが、痙攣24時間後の免疫染色では消失していた。文献的には、GABAの抑制による強直性痙攣発生で本実験と同部位にc-fos蛋白の発現を認めることが報告されている。高気圧酸素療法による痙攣では、GABAの抑制による強直性痙攣と相似した領域(梨状皮質、頭頂葉、海馬、歯状回、下丘)が痙攣の発生に関与していると考えられた。
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