窩洞形成を行わない対照群のラット歯髄では、歯髄組織の間質結合組織、大食球の胞体および象牙前質がHorseradishperoxidase陽性となり象牙細管内は陰性となった。V級窩洞を形成した歯髄では、窩洞形成直後から1日後までは窩洞形成の影響を受けた象牙芽細胞は消失あるいは象牙前質から剥離してしまうが形成後3日から5日までには新生した象牙芽細胞が象牙前質に再び配列するようになった。Horseradish peroxidaseは形成直後から形成5日後まで窩洞形成の影響を受けた象牙細管内に認められた。新生象牙芽細胞が象牙前質に配列する形成5日後に象牙細管内にHorseradishperoxidaseの陽性反応が認められたことから、新生象牙芽細胞の配列は象牙細管への組織液の移動を阻止しない可能性が示唆された。 窩洞形成後のFibrinogenの局在を同様の実験系で免疫組織化学的に検索したところ、窩洞形成直後から窩洞形成1日後まで窩洞形成の影響を受けた象牙細管内にFibrinogenの局在を認めた。Fibrinogenは血管外ではFibrinに変化し網目状の構造物となるとされているので、象牙細管内のFibrinogenは窩洞形成直後から1日後までの象牙細管内の透過性減少に関与している可能性が示唆された。 今後の研究の展開 (1) 形成後7日および10日例を検索し修復象牙質の形成と象牙細管への組織液の移動との関係を明らかにする。 (2) 電顕レベルでのHorseradish peroxidaseの局在を検索する。 (3) 創傷治癒に重要な働きをしFibrinogenと親和性の高い細胞外マトリックスの局在を同様の実験系で免疫組織化学的に検索する.
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