研究概要 |
歯を支える歯周組織では歯根膜構成細胞,骨芽細胞,破骨細胞および骨細胞が存在するが、矯正学的な歯の移動に伴い、矯正力負荷によって歯根膜組織に変性をきたし、肉芽形成による組織修復機転が働くなかで、破骨細胞の分化から骨改造が継続して誘起される。本研究の目的は,規定された大きさの力学的負荷(メカニカルストレス)を歯槽骨に与えた際の骨代謝や改造に及ぼす影響と骨関連細胞の動態について病理組織学的に調べた。実験系としては、ラット上顎第一臼歯(M1)を近心方向に牽引する矯正力を与え、初期荷重の大きさと作用期間を変動パラメターとして、破骨細胞活性(細胞形態とアルカリフォスファターゼALP活性)と骨芽細胞活性(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼTRAP活性)の発現時期と歯槽窩内での局在をそれに伴う第一臼歯の歯周組織に注目した。初期荷重を規定するためコイルスプリング法による矯正力を右側臼歯に負荷させ,反対側を荷重負荷しないsham側とした。硬組織代謝の定量のため、実験動物に多重蛍光標識を施した。試料観察に際しては、非脱灰・MMA樹脂包埋・薄切と、EDTA液にて脱灰・凍結あるいはパラフィン包埋・免疫染色およびAlPase/TRAP二重染色を施した。平成10年度の観察から、持続的負荷の条件下での細胞動態に加えて、短時間のみ荷重を負荷した場合にも、長期間の誘導期を経て破骨細胞と骨芽細胞が活性化されることを確かめた。さらに、負荷直後の圧迫側の歯槽骨表面では非破骨細胞性と考えられる吸収が早期に起こった。現在、マクロファージ系の貪食細胞の関与を想定して、その細胞動態と破骨細胞活性の誘導との連関を調べている。次年度においては、反復した荷重負荷による細胞活性の蓄積効果(応力記憶)と、矯正治療において問題となる歯根吸収の発症機構について調べていく。
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