本研究(平成10年度)では、多変量生存時間データの解析への応用を念頭において、打切りのある多変量データに対する正準相関分析法の理論の構築を行った。正準相関分析法を回帰分析法の一般化(一方の変量集合が一変量のとき、線形回帰分析に帰着するという意味において)と捉えることによって、打切りのある多変量データに対する正準相関分析法の開発を行なった点が本研究の大きな特色である。生存時間データに対する回帰分析法としては、線形回帰分析と共にコックス回帰分析がよく用いられる。そこで、本研究において、線形回帰分析の一般化としての正準相関分析とコックス回帰分析の一般化としての正準相関分析法の開発を行った。 線形回帰分析の一般化としての正準相関分析を開発することの本質は、打切りデータに基づいて、2変量間の共分散構造の推定法を開発することにある。そこで、カプラン・マイヤー積分統計量に基づく推定量を考え、その性質を明らかにした(鈴川、種市(1998))。 コックス回帰分析の一般化としての正準相関分析法に関しては、その定式化を行った。これにより、複数の共変量が複数の生存時間のハザードに与える影響を総合的に評価・解釈することが可能になると予想される。この分析法の「有効性の検証」と「改良」を来年度(平成11年度)に行い、その成果を公表する。また、共変量に欠測値がある場合のコックス回帰分析に関して、回帰係数推定法の開発を行い、その性質を明らかにした(桑原、鈴川、佐藤(1998))。この手法の正準相関分析への一般化を平成11年度に行う。
|